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2021年03月12日
日台友情台北
池井先生は日本外交史がご専門で日米の野球の歴史にも詳しい慶応大学の名物教授です!エピソードの募集を知ってすぐに執筆してくださいました。 --------------------------------------------------------- 国際交流基金の要請によって台湾に赴いたのは2012年のことでした。台湾の日本研究を活性化する目的で同年2月から4月に掛けて台北郊外の政治大学大学院で「戦後日本外交史」を講義し、各地の大学で講演、博士論文の指導をおこなうことになったのです。 いい機会なので、大学関係者のみならず、台湾のひとびとにも接触し、日本に対する関心、対日態度を知ろうと努めました。そして知ったのが、東日本大震災の折の台湾の対応でした。世界各国、各地域からの支援、援助の申し出が相次ぎましたが、台湾からの義援金は世界のなかでも突出した250億円にも達しました。他の国が政府主導であるのに対し、台湾は政府、地方自治体、民間、個人とあらゆるレベルからの貴重な援助だったのです。台湾の芸能界は総結集して震災チャリティを企画しました。また、日本で被災した学生とその家族、日本に居留している華僑などが台湾の地で半ヵ月から1ヵ月ホームステイができるよう100軒の一時避難先を提供するという企画もありました。航空会社は災害地域のひとびとの来台用に航空券を最低価格まで引き下げる措置をとりました。 台北の交流協会(現日本台湾交流協会)事務所には、小学生が幼い字で書いた「加油!日本」(ガンバレ!ニッポン)のカード、年輩の方の筆跡と思われる枯れた字の「日本の被災地の皆さんに笑顔が戻る日を待っています」と書かれた手紙などが寄せられ、日本統治時代に日本語教育を受けて育った世代からこころ温まる短歌が届けられました。 国難の地震と津波に襲わるる祖国護れと若人励ます 未曾有なる大震災に見舞われど秩序乱れぬ大和の民ぞ 天災に負けずくじけずわが友よ涙も見せず鬼神をば泣かす 福島の身を顧みず原発に去りし技師には妻もあるらん これほどまでに台湾のひとびとは日本の災害に同情し、物心両面で援助してくれたのかと、日本人は改めて台湾を見直したのでした。それは具体的な動きとなりました。日本政府がアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、韓国6カ国の大手新聞に震災に対する支援感謝の有料広告を出しましたが、台湾は含まれていませんでした。「おかしいじゃないか」、「台湾にもお礼がしたい」とツイッターに賛同者が続々と現れました。台湾2紙の広告料約240万円の募集に対し、なんと全国から6015件、約1930万円が寄せられたのでした。台湾の大手新聞『自由新報』、『聯合報』に日本語で「ありがとう、台湾」、中国語で「愛情に感謝します。永遠に忘れません」との思いを記した感謝広告を出すことができました。 これが追い風となって、懸案だった「NHKのど自慢イン台湾」も2011年10月に台北の国父紀念館で開催することができ、出場した台湾駐在の日本人駐在員の奥さん2人組はこの機会を利用して東日本大震災に対する援助に「謝謝台湾」と挨拶しました。 東日本大震災から10年、我々日本人は世界一親日の国台湾を大切にしていかなければいけないと改めて思うのです。 (慶應義塾大学名誉教授 池井 優)
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