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第6回「誠実に聞き的確に反論する-ディベートの魅力-」(3月1日)

更新日時

2008年 3月 12日作成

コンテンツ

今回は、二杉孝司氏(金城学院大学副学長・文学部教授/全国教室ディベート連盟理事長)を講師にお招きし、下記のテーマでお話しいただきました。


テーマ  : 「誠実に聞き的確に反論する ―ディベートの魅力―

日 時  : 2008年3月1日(土)  14:00~17:00

参加者  : 台湾の日本語教育関係者・大学院生41名

配付資料: 「誠実に聞き的確に反論する ―ディベートの魅力―」(PDFファイル:Acrobat Readerが必要です)

参考資料: DVD教材「ディベートで学ぶエネルギー問題」全国教室ディベート連盟東海支部(詳しくはhttp://www.ii-park.net/~nade-tokai/debate.html )


 今回の講演では、上記参考資料所収の『日本はサマータイム制を導入すべきである。是か非か。』という論題で行われた中学生のディベートの様子を見ながら、「ディベートとは何か」や「ディベートで身に付くこと」などが説明され、ディベートの魅力が紹介されていきました。

 まず、ある主張に対する反論は、その主張の根拠としている部分を衝く「内在的反論」と、主張では触れられていない別の観点から反論する「外在的反論」の2つのタイプに分けられることが導入され、例示されたいくつかの反論を分類する練習が行われました。

 次に、主張や反論を聞きながら要点をメモする方法が紹介され、実際にDVDを視聴しながら演習が行われました。肯定側と否定側それぞれの立論、質疑、反駁のたびごとにDVDを止めて、要点の確認と解説が加えられていきました。

 このようにしてディベートの流れが提示され、全体像が把握された後で、受講者の理解を更に深めるための講義が続けられました。「ディベートとは何か」についてのお話では、1)ディベートは討論のゲームであり、思考の論理を鍛え、コミュニケーション・スキルを高めるトレーニングを行うためのものであること、2)相手の話をよく聞かないと勝てないディベートに固有の特徴は、話すことがうまくなることよりも、聞くことが上手になることにあること、3)根拠を伴った主張と反論を相互に展開し、反論に耐えることのできた主張が正しいものと見なされて勝敗が決するディベートの目的は、主張の正しさを論理的に検証することにあること、4)この意味で、ディベートの本質は反論にあると言えること、などの点とともに、ディベートの主なルールも紹介されました。

 そして、「ディベートで身に付くこと」については、A)ディベート固有の意義、B)反論の意味、C) 外在的反論と内在的反論、D)反論の体系的組織としてのディベート、の4つの観点からお話がありました。A)では、ディベートは反論を体系的に組織するものだから、「議論を整理する力」を育てることがディベート固有の教育的な意義だという見解を述べられ、B)では、反論の意義は、主張を支えている根拠に私たちの目を向けてくれることにあり、反論に出会うことによって自分の主張の弱点を知ることができると説かれました。C)では、外在的反論だけでは水掛け論になり、内在的反論だけでは視野のせまい議論 になるが、ディベートでは、肯定側・否定側双方の立論が相互に外在的反論になり、双方 の反駁が内在的反論になるから、バランスのよい議論ができるとされました。D)では、最初から肯定・否定の立場が決ま っているディベートでは、反論する力を身につけることができ、反論を体系的に組織する議論のシステムを通して、議論の構造を整理する力が育てられるのだと話されました。

 最後に、ディベートの魅力について、次のようなお話がありました。1) ディベートを通して身につけた力を日常の討論や学習に生かすところにディベートの教育的意味がある。2) 常に異論を想定するディベートは、実は、学習そのもののモデルであると言うことができ、一人で頭の中でディベートすることが「考える」ということである。3) ディベートは、異論を想定するという思想的態度を育て、社会的判断の基礎的な技術を提供するという意味で、民主主義を支えるものであると言ってもよい。4)論題についてリサーチする楽しさ、反論を意識しながら自分の議論を作る楽しさ、自分の議論を支える資料を見つけた時の嬉しさ、4分間の反駁を前にした準備時間の緊張感など、「ディベートの魅力に取りつかれると、ディベートから離れることができなくなる。」と説かれ、参加者にディベートの面白さを体験するよう促されて、講演が締め括られました。

 以上のような、ディベートの実例を視聴しながらのわかりやすい講演は参加者にも好評であり、「ディベートの魅力がわかった」、「専門家の経験から色々教えてもらって、すごく勉強になって良かった」などの感想が寄せられました。



(講師の二杉孝司先生)


(講演会の様子)