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2022年12月11日

お知らせ活動報告(写真)泉裕泰台北

日台関係シンポジウム 泉裕泰代表挨拶

本日、日台関係シンポジウムを開催するにあたりご挨拶を申し上げます。

全世界を混乱に巻き込み、日台のみならず世界の自由な往来を阻んだコロナ禍がようやく落ち着いて参りました。実に2年半ぶりに、本日は日本から多くの国会議員の先生方や研究者の方々、外交に携わってきた方々をお迎えし、日台の関係者が一堂に会するシンポジウム開催を実現する運びとなりました。

このような日が来ることを私だけでなく、会場にいらっしゃる皆さまの誰もが待ち焦がれていたことと思います。私は、本日のシンポジウムが、日台がコロナ以前の正常な世界を取り戻すきっかけとなり、そして日台の記念すべき歴史の1ページとなってくれることを期待しています。

この12月、日本台湾交流協会も台湾日本関係協会も設立50年を迎えました。本日のシンポジウムは両協会設立50年の機会に、両協会の共催で、これまで日本と台湾がいかにして今日の良好な関係を築き上げてきたかを振り返ると同時に、将来の「日台友情100年」の未来を見据え、日台関係の課題と展望を議論しようとするものです。

1972年、非政府間の実務関係となった日台関係は、まさにどん底から出発し、爾来、山あり谷ありの50年、先達の皆さんの労苦と努力のなかで今日の良好な関係が築かれてきました。

特に、外交関係の不在を補完し、政府に代わって日本と台湾を結びつけるチャネルとして大きな役割を果たしたのが議員外交でした。長年にわたって台湾に思いを寄せて下さっている萩生田光一・衆議院議員をはじめとする国会議員の先生方にご登壇いただけることは、本日のシンポジウムにより深い意義をもたらすものと思います。

また、国会議員の先生方のみならず、日本を代表する台湾研究者の方々や、外交の現場で台湾に接してきた有識者の方々にも議論に参加していただくことになっています。日台双方のご登壇いただく先生方に改めて心からの感謝を申し上げたいと思います。

コロナ禍により、3年近くにわたって往来の途絶えた日台ですが、その中にあっても双方の関係が着実に前進していく様を、私はつぶさに観察してきました。コロナの流行開始当初、日本でも台湾でもマスクが不足し、台湾の街角にはマスクを求めて行列を作る人々の姿がそこかしこで見受けられました。日本のマスク不足はそれ以上に深刻でしたが、そのとき手を差し伸べてくれたのが台湾でした。

台湾は「Taiwan Can Help!」を合い言葉に、何ら見返りを求めることなく、マスク不足にあえぐ日本を含めた世界の国々へ、マスクのみならず多くの医療物資も届けてくれました。こうした台湾の無私の思いに呼応するように、日本もまた、台湾でコロナ感染が拡大した際にはすみやかにワクチンを台湾に届け、多くの台湾の方々から感謝されました。私は、日本と台湾の間には、このような見返りや利益を求めることなくお互いを思いやって行動できる信頼と友情が築かれていると改めて感じたものです。世界を見渡しても、隣国同士の間にかくも良好な関係が保たれている例を寡聞にして知りません。

私が2019年に台湾へ着任し、ちょうど3年が経ちました。この間、台湾に対する経済面や軍事面における中国からの圧力がますます強まってきました。そのような状況にあって、台湾の大部分の人々が現状維持を切望しています。私は、台湾の人々が台湾の将来は自らが決めると考えていることを、いち民主国家の人間として良く理解するものです。そして、台湾が現状を維持していくためには、私は台湾の人々が台湾について自信と誇りを持つことを通じて、自らの台湾アイデンティティを強化していくことが何よりも大切であると考えるようになりました。

私の着任時には、現在ほど国際社会は台湾の重要性を認識していなかったように思います。特に台湾から遠く離れたヨーロッパの国々は、台湾の経済面には関心があっても、その戦略的な重要性についてはほとんど理解していなかったように思います。

実際のところ、台湾は太平洋と東シナ海、南シナ海という3つの海が接するチョークポイントであり、日本にとっても台湾海峡は6分に一隻の貨物船が通過する物流の重要な輸送ルートになっています。

経済面においても、台湾が誇るTSMCに代表される半導体産業は、世界のサプライチェーンの重要な一環を担っており、台湾の「護国神山」として世界に存在価値を示しています。台湾に対する自信と誇り、これこそが台湾アイデンティティの源であります。奇しくも、台湾アイデンティティの強化を提唱し、今日の民主台湾を築き上げたのも、また台湾の半導体産業に種を播いたのも、私が心から尊敬する李登輝元総統でありました。

残念ながら李登輝総統は2020年7月に世を去られてしまいました。また、まことに惜しまれることに、今年7月には、李登輝元総統を師と仰ぎ、ともに日台関係を引っ張って来られた安倍元総理も非業の死をとげられました。日台関係は、二つの強力なエンジンを相継いで失ったかのようでしたが、私たちはここで立ち止まる訳にはいきません。むしろ、日台関係は、双方の人々が手を取り合って、100年の将来に向けてさらに一層前に進めていくべきものです。

そうした意味で、これまでの日台関係を振り返るとともに、今の日本と台湾が直面する課題や将来の展望について議論を進める本日のシンポジウムは、私たちに大きな示唆を与えてくれるものになることを大いに期待しています。

今日の日台関係は最良です。私はこのような日台関係のなかで、台湾において日本の代表をつとめることのできる有り難みを噛みしめています。本日は、私たちが先達から引き継いだ良好な日台関係を、いかにしてより高みのステージへと押し上げていくか、そのためのヒントとなる活発な議論がなされることを心より願い、私の挨拶とさせていだきます。