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 11月1日、台北市内のホテルにおいて泉裕泰・当所代表の離任レセプションが行われ、陳菊・監察院長や游錫堃・立法院長、鄭文燦・行政院副院長、蘇嘉全・台湾日本関係協会会長をはじめ、日台の関係者約250名が出席しました。

泉代表の挨拶全文は次の通りです。

 本日は私の離任レセプションにお集まりいただき心より御礼申し上げます。

 はじめに、10月30日に蔡英文・総統より名誉ある大綬景星勲章をいただいたことを、ご報告申し上げます。このような大きな名誉をいただき、台湾の皆様に心より感謝申し上げる次第です。頂いた勲章は、本日はつけて参りませんでした。失くすといけないので、家宝として大切にしまってあります。

 今日お声がけをしたのは、私の在任中お世話になった方々ばかりです。また、残念ながらこの場でご一緒することができなかった大切な方々も大勢います。そして、直接面識のない本当に多くの方々にも、私はずっと支えられてきました。深くお礼申し上げます。

 私は40年以上にわたった外交官生活をこれで終えますが、この最後の4年間は、台湾の政府や経済界、文化界、様々な分野と人々の協力を得て、お互い本当にきもちのよい仕事ができました。日本のすぐ隣に台湾というかけがえのない友人が存在することの奇跡のようなありがたさを身に沁みて感じました。私は台湾に携わったあらゆる外交官の中で最も幸せな一人でありました。今一度、衷心からの御礼を申し上げます。

 この台湾での4年間、私は代表として、表舞台に立ち続けてきました。ですが、私がなんとか任務を全うできたのは、私の周りにいてくれた人たちの助けがあってこそです。本日は、私の最後の表舞台となるこの機会をお借りして、いつも舞台裏を支えてくれた私の大切な仲間を、皆様に紹介させてください。

 まず、我が日本台湾交流協会の日本人並びに台湾人の同僚の皆さんに感謝したいと思います。あなたたちが、日々、献身的に仕事をしてくれなければ、私は実際のところ、何ひとつ達成できませんでした。日台関係の強化に向けて、皆さんと共に努力した4年間は本当に楽しく、また意義深いものでした。

 そして、私は何よりも、妻正子に感謝しなければなりません。今日も正子の友人たちがたくさんいらしていますね。妻は、私の海外任務に当たり、世界中についてきてくれました。彼女の支え無しには、私はしっかりとした外交官としての仕事も、健康な生活も維持出来なかったでしょう。それから、私の秘書の高比良さんはいつも私に同行してくれて、一日中、私の仕事や健康について気を配ってくれました。私の難しいオーダーをものともせず様々なアポイントを効率よくとってくれた台湾人秘書の許さん、あなたは本当に有能です。公邸スタッフの陳さんに高さん、連日の設宴はとても大変だったはずですが、誠実に本当によく働いてくれました。ドライバーの詹さん、どこにいくにも頼りになる私の専属ドライバーです。おいしい屋台もたくさん教えてもらいました。庭師の廖さんは、陽明山の私の公邸に美しいバラ園を作ってくれました。

 それから、ここで特に、長瀬公邸料理人に私の心ばかりの気持ちをこめて、「日本台湾交流協会代表表彰」を差し上げたいと思います。長瀬料理人は、私の色々な注文に誠実に応えてくれ、たくさんのお客様を真心でもてなしてくれました。毎年の天皇誕生日レセプションで彼のブースの前にできる長い行列は、伝説的です。ここにいる全員が私の「チームジャパン」です。私一人ではなく、このチームがあって初めて、台湾と「チーム日台」を組むことができたのです。本当にありがとう!
 私はまた、私の両親にも感謝を述べたいと思います。2年前に逝去した父が、母を通じて私に残した最後の言葉は、「台湾での仕事をほうり出して帰ってくるな、任務を全うすべし」というものでした。それで私は父の最後にも葬儀にすらも立ち会うことができませんでした。ですが、だからなのでしょうか、時々、今も日本で父が生きているように錯覚することがあります。今年90歳になった私の母は、私が任務を全て果たして帰国することを誰よりも喜んでくれています。

 私は、今、チームジャパンとチーム日台に支えられて全ての仕事をやり尽くした満足感と、ようやく重責を下ろすことができるという、安堵の気持ちでいっぱいです。皆様、本当にありがとうございました。

 私の在任した4年間は、蔡英文総統の二期目とほぼ重なっています。私はこの間に、世界の台湾を見る眼が大きく変化するのを目撃してきました。世界的サプライチェーンの再構築、コロナ危機、ウクライナ情勢など、国際情勢の変化と連動し、台湾への国際的認知は広がり、深まり、双十節の蔡英文総統のスピーチにあったように、台湾は「世界の台湾」となりました。それは蔡英文政権のもたらした大きな外交的成果であるといってよいと思います。台湾はますます自信を高めています。堂々たる今日の台湾の姿を、世界は、耳目に焼き付けています。本当にこの上なく喜ばしいことです。

 他方で、私たちは同じ時期に、香港での国安法の施行と、「時代革命」の松明がひとつ、またひとつ消えていく様も目撃しました。自由と民主を守るために戦い、弾圧された若者たちは、今、世界の各地に逃れていますが、私は次の時代はきっと彼らのような若い人たちのものであると確信しています。

 私の在任中、私たちは、李登輝元総統と安倍元総理という日台関係を力強く支えてくださった大黒柱を、相次いで失いました。この二人の逝去により、私たちは未来への進路を導く羅針盤を失ったような衝撃を受け、一時は途方に暮れました。しかし、今、日台は共に力強く立ち上がり、日台関係の更なる強化に向けて邁進しています。

 この先、台湾はさらに大きく変化し、その存在の重みを増していくでしょう。そして、たとえそのなかで大きな試練の到来があったとしても、台湾の人々は果敢に自分たちの未来をかちとっていくに違いないと私は信じています。

 自分たちで自分たちを守る、その揺るぎない精神で、自分たちの未来と運命を手にするのだという、蔡英文総統の双十節スピーチが、耳に残っています。自由と民主を愛し、尊ぶ台湾は、国際社会に不可欠の貢献をしてきました。この危機の時代にあって、台湾の人々が分断されることなく、より一層結束し、自分たちの民主と自由を守る強い意志を示していくこと、そして国際社会のメンバーとして国際社会に貢献していくことが、これからの台湾にとって何よりも大切なことです。

 私の後任は、最近まで駐ペルー大使を務めていた片山大使です。彼は有能な外交官であり、中国語も堪能です。語学が好きだと聞いているので、台湾語にもチャレンジしてくれるかもしれません。きっと台湾と日本の架け橋として、全力を尽くしてくれると思います。

 この4年間、私はずっと、台湾の頑張りを精一杯応援したいと願いながら、共に走り続けてきました。がんばれ台湾! (台湾加油!)台湾、強くあれ(堅強)、もっともっと強くあれ(更堅強)。

 そう願い続けながら、これからも私の心はずっと、台湾という麗しの島と共にあります。自信をたくわえた台湾は、これからも必ず、前に進み続けていくものと、信じています。

 最後に、離任に際しての思いを込めて、私が趣味で作った七言絶句を会場で配布しています。出来は決してよくありませんが、私の外交官生活を締めくくるものとして、お時間があれば、ご一読いただければ光栄です。

 ありがとうございました。

 謝謝、大家
 謝謝、台湾
 再見、台湾!