対日理解促進交流プログラム 「JENESYS2024PhaseⅡ」「JENESYS2025」の一環として、3月18日~3月24日まで、日本の大学生・大学院生10名が「防災」「環境・エネルギー」をテーマとして、台北市・桃園市・新竹県を訪問しました。
今回の訪台に参加をした日本人学生からの声をお届けします。
日台の知恵で描く持続可能な未来
2025年3月18日から24日までの7日間、対日理解促進交流プログラム「JENESYS2025」の一環として、日本の大学生10名が台湾を訪問しました。テーマは「防災」と「環境エネルギー」。台北、桃園を舞台に、専門的な視察と対話を通じて得た学びと、私たちが導き出した未来への展望を報告いたします。
専門施設への訪問:最先端から考える課題解決
今回の派遣の核となったのは、日台共通の課題に対して異なるアプローチを持つ様々な施設の訪問です。
1.台湾科技大学(NTUST)

最初に訪れたNTUSTでは、英語でのプレゼンや議論を通じ、同世代の学生が取り組む研究に大きな刺激を受けました 。
また、中華経済研究院の江主任による講義で「台湾人はスピード感とおもてなし精神がある」という特徴を学びましたが、これが後の合宿でその特徴を実際に体感することになります。
2.国家原子能科技研究院(NARI)

3月20日に訪問した国家原子能科技研究院では、チームごとに分かれて原子力分野の取り組みを学びました。
防災チームは、放射線災害への応急対応や防護体制、緊急警戒メカニズム、訓練・研究センターの役割などについて体系的な説明を受け、有益な意見交換を行ったそうです。
一方、私が参加した環境エネルギーチームでは、核融合の最先端技術に加え、低炭素・低コストの「電致変色ガラス(IDIMPT)」や「スマートグリッド配電管理システム(iDNMS)」といった革新的技術を視察しました。
これらの技術の中にはR&D 100 Awardsを受賞したものもあり、研究段階にとどまらず社会実装へと進んでいる様子を間近で見られたことは大きな収穫でした。

また共通プログラムとして、食品検測や生物トリチウム検測実験室を見学し、安全保障を支える精緻な技術にも触れました。
さらに、福島第一原発事故を受けた輸入規制や検査が2025年9月まで継続されていたことを知り、この事故が国際社会に与えた影響の大きさと、それを契機とした原子力分野の発展について、台湾という日本の外から、より多角的な視点で理解を深めることができました。
3.寶晶能源(INA ENERGY)
同日、環境エネルギーチームはINA ENERGY社も訪問しました。同社は主に太陽光発電を手がけており、特に屏東で展開されている水上型太陽光発電と地域活性化の取り組みが印象的でした。
地盤沈下によって利用価値が低下した元茶畑の池を活用し、「発電・農業・観光」を組み合わせた地域再生モデルを構築している点は、日本も学ぶべき点が多いと感じました。
また、太陽光パネルの管理において、鳥の糞による汚れを防ぐためにAIやドローンを活用し、効率的な運用を実現している点も興味深く感じました。
台北事務所での集中管理システムの見学や質疑応答を通じて、現場の具体的な運用について理解を深めることができました。
4.台湾設計研究院(TDRI)

3月23日に訪れた台湾設計研究院では、デザインの力による社会課題解決の可能性を学びました。
特に、公民連携の取り組みとして、投票告知ポスターや裁判所の空間デザインの改善など、視覚的アプローチによって民主主義の促進に寄与している事例が印象的で、公的機関の柔軟な姿勢に驚かされました。
また、統治時代の建物を新しいスタイルで美しくリノベーションする、歴史的建造物を活かした台湾ならではの街並みには、「壊して作る」のではなく「既存の価値を活かして高める」という思想のもと、環境に配慮した持続可能な都市づくりが進められていることを学びました。
台湾における「デザイン」の力は、外交や国際発信においても重要な役割を果たし得ると実感しました。
交流とライフスタイル:真の相互理解へ
1月の筑波合宿でともに学んだ台湾学生たちと現地で再会し、JENESYS台湾初となる、訪台期間中の一泊二日の合宿を行いました。この機会を通じて、双方の日常生活に根付いた環境への配慮の違いに気づきました。

エコ習慣の比較では、日本における自動販売機の普及とそれに伴うリサイクルの発展や、ゴミ分別・ハンカチ文化の定着を再認識する一方で、台湾ではホテルのアメニティ廃止(違反時の罰金制度あり)やマイボトル持参による割引制度など、法規制とインセンティブを組み合わせた脱プラの徹底ぶりに驚かされました。さらに、それらの制度が社会に導入され、浸透していくスピードの速さからは、まさに江主任がおっしゃっていた「スピード感」を実感しました。また、日本の「美的包装」に対し、台湾の「包装層数制限」という合理的な考え方は、持続可能な消費を考える上で大きなヒントとなりました。

文化の違いから生まれる意識の差も非常に興味深いものでした。
BBQやアスレチックを通じて親睦を深め、夜遅くまでそれぞれのテーマについて議論しました。
BBQの時間には、台湾の学生が積極的に食べ物を焼いてたくさん分けてくれたり(部屋に戻ってからもお菓子をくれました)、キャンプファイヤーや一緒に踊れるダンスを準備してくれたりと、そのおもてなしの厚さに、思わず「タイム!」と言いたくなるほどでした。

自由でマイペースな台湾学生の行動には、最初こそ戸惑いもありましたが、規則や常識にとらわれがちな日本人にとっては新鮮でもありました。
彼らの生活スタイルと、日本の統率力の高さ、それぞれに良さがあるのだと認め合えたことは、非常に貴重な経験でした。
今回の派遣全体を通して痛感したのは、サブカルチャーへの関心を超えた、経済・政治的な深いレベルでの相互理解の必要性です。
特に日本人における台湾理解は、台湾側の日本理解と比べて圧倒的に不足していると感じます。
実際、私の周囲でも台湾を訪れて初めて「台湾人って中国語を話すの?」と驚く人がいますが、そこからさらに台湾語や客家語など、多様な言語とアイデンティティを持つ人々が暮らす社会であることを知る、という場面をよく目にします。
学生訪台団長が最終日の成果報告会で述べていたように、日本の教育において台湾に関する言及が少ないことも一因だと思いますが、私たちが個人レベルで今回得た学びを、さまざまな形で発信していくことの意義を改めて強く認識しました。
アクションプラン:平和は一人ひとりのこころから

最終日の成果報告会では、今回の学びをどのように行動へとつなげていくか、一人ひとりが帰国後三か月のアクションプランを発表しました。
マイボトルの常用やアメニティ持参といった日常の小さな変化から、将来のキャリアに結びつけた取り組み、さらにはSNSでの発信による多角的な相互理解の促進まで、その内容は多岐にわたりました。聞いていて、私自身も強く心を動かされたのを覚えています。
今回の訪問の目的である「日本と台湾との未来に向けた友好・協力関係を築くこと」は、台湾という存在を一人でも多くの日本人が深く知ることから始まります。
だからこそ、私たち自身が、日本の人々に台湾を深く知ってもらうきっかけをつくり続けていく存在でありたいと、強く感じました。

ユネスコ憲章の「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という言葉の通り、平和は人と人との交流による心の変化から育まれるものです。
私たちはこれからも、さまざまな分野で、表面的な理解にとどまらない「日台の架け橋」として歩み続けていきます。
温かく迎えてくださった台湾の皆様、日本台湾交流協会、中華経済研究院、JTBの皆様に心より感謝申し上げます。